鬱病から回復した経験から語る。心の病にかかった社員への対処法について

心の病にかかった社員への対応 人事担当の皆さまへ
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こんにちは。リクルーティング・パートナーズ マーケターのやのです。
私の趣味(実益を兼ねる)は漫画・イラストなので、特にお金はかかりません。
それなのに、最近どうも貯金がうまくいかないな…と思っており、よくよく考えると1ヶ月の食費が10万円を超えていました。(山崎さんに怒られました)(※独身・一人暮らしです)

おいしいものを食べることだけがストレス解消になっている、(健康面と金銭面で)大変危険な状況です。

さて今回は、ストレスに密接に関係する「心の病」についてのお話です。
少しだけ重いテーマになりますが、人事の皆さまや、部下や後輩を抱える方にぜひ読んでいただきたいと思い、筆を執りました。

今から、元鬱病患者であった私の経験から「心の病気のときに会社にやってもらうと嬉しいこと」と、「心の病気の社員に言ってはいけないこと」をお話しいたします。

私の経験が、心の病を抱える全ての人にあてはまるということではなく、「仕事によって心の健康を崩してしまった」社員の一例として考えていただけますと幸いです。

(はじめに)心が疲れている人はどんどん増えている

近年、心が疲れている人が増加傾向にあります。

精神疾患を有する人が増加している

(出典・厚生労働省 みんなのメンタルヘルス 精神疾患のデータより)

このように、鬱病・ストレス関連障害などで、心の健康を崩してしまい、苦しむ患者さんが年々増加している状況です。
一生のうち、鬱病に罹患する人は、じつに12人に1人ともいわれています。

それを受けて、企業でも「ストレスチェック」が2015年12月より、50人以上の従業員がいる職場で実施が義務化されました。

しかし まだまだ、「現在の仕事や職業生活に不安やストレスを感じている」という労働者は全体の58.0%と多く(2019年8月厚生労働省「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)より)、職場内でのメンタルケアに長期的な視野で取り組む必要があるといえます。

残業時間、毎月200時間以上。ネットカフェで泊まり込みの毎日…

私が新卒で入社した企業は、地元でも有名なベンチャー企業でした。

当時はリーマンショック後の氷河期と呼ばれていた時代で、私も就職に大変苦労したことを覚えています。
6ヶ月に及ぶ面接で、やっとつかんだ内定先は、労働時間や仕事内容が厳しいことが業界的にもよく知られている、俗に言う「ブラック企業」でした。

残業時間は毎月200時間以上
ネットカフェでの泊まり込みや、オフィスの椅子を繋げての睡眠・夜明かしも多く、風邪を引いても休めないような状況でした。

気がつけば1年半で体重は10kg減り、夜も眠れない「不眠症」に。
心療内科に通い、一番強い睡眠薬と抗不安剤を処方され、生きているか死んでいるかもわからない状況で働いていました。

本当に苦しいとき、周りの優しい声は本人には届かない

落ち込んで座り込む女性

今思えば明らかにおかしい精神状態で勤務をしていましたが、当時、周りで私を心配してくれる声は、何一つ私に届きませんでした。

「そんな会社、転職しようよ」と言ってくれる友達もいました。しかし、せっかく勝ち取った内定先を手放すのが恐ろしく、私は転職を考えませんでした。

それに、周りの上司や先輩たちは同じような状況でもイキイキと仕事をしている(=頑張っている)ため、自分だけここから逃げることは絶対にできないと思い込んでいました。

環境に耐えられなくなった同期や後輩が突然失踪(捜索願が出た後、無事に怪我なく見つかりました)することもあり、彼らのことを「逃げやがった」と陰口を叩く人もいました。

「逃げると陰口を叩かれる…
頑張っている先輩もいるんだから、自分にできないはずはない…」

そのような考えで私は自ら逃げ道を塞ぎ、両親や親友の声はいよいよ何も聞こえなくなっていました。

深夜に倒れて救急搬送、自殺の危険から隔離棟へ

そしてついに2年目のある日の深夜、持ち帰りの仕事を片付けていた時に倒れ、救急搬送されました。

その辺りの詳しい記憶はほぼなく、救急搬送の連絡に驚いて駆けつけた両親いわく、「雇ってくれた上司に、まだ恩返しができていない」とうわ言のように繰り返していたそうです。

さらには「恩返しができないまま辞めるくらいなら、死にたい」とも言っていたそうです。

この時の発言が「希死念慮(患者が死にたいと強く思い、自殺などにつながる恐れのある状況)」があるということで、私はそのまま地元の精神病院の隔離棟に入院しました。

鬱病は風邪と違い、薬だけで治ることは稀です

心療内科という病院があります。
メンタルクリニックという名前で、オフィス街を中心によく見かけることもあります。

これは心の病気を主に診てくれる病院なのですが、私はずっと「鬱病は薬を飲んでいれば治る」と思っていました。
「内科」と名前が付くのだから、お医者さまに診ていただき、処方された薬を飲んでいれば大丈夫だと気楽に考えていました。

しかし、最初はかなり軽めの薬(睡眠導入剤の場合、寝つきを良くする程度)だったのに、だんだん薬の効きが悪くなり、ついには最も重い薬が処方されるようになってしまいました。

よく誤解されることですが、鬱病は、風邪と違い、薬だけで完治することは稀です。
必要なのは、十分な休養と睡眠、休職する場合は家族のサポートなど様々ですが、最も重要なことは「環境を変えること」だと私は思っています。

もし心の病に苦しんでいる社員がいたら、環境を変えてあげてください

鬱病(心の病)の原因は様々ですが、誤解を恐れず言えば、私は鬱は「環境病」だと思っています。

退職理由で最も多いのが「人間関係」(https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/)であることからも、「職場環境」の良し悪しや、業務や共に働く人たちとの相性が、その人の働きやすさに直結していると思っています。

私が鬱病になる原因となった元会社も、その環境に適応して、頑張っている社員はたくさんいました。
その会社の環境が万人に対して悪い(合わない)ものだったのではなく、「合わなかった社員」のひとりが、たまたま私だったというだけでした。

そしてこれは後述しますが、私自身の「ストレスの許容量」を超えてしまったので、私は心の病にかかってしまったのです。

うつむいて海辺を歩く女性

ある社員が心の病で休職し、数ヶ月後に復職しようとしたとします。

せっかく治りかけているのに、この時、また同じ環境にいれてしまうと、元の木阿弥です。
鬱病ははしかと違って、一度かかったらもうかからないものではありません。何度でも再発します。

薬を飲めば完治するという病気でもありません。むしろ、薬だけを飲んで治そうとしても、私のように、更に強い薬でないと効かなくなり、断薬がどんどんきつくなるだけです。

人事担当の方や、部下・後輩を持つ皆さまにお願いです。

もし鬱病から復職する社員がいたら、とにかく「環境」を変えていただくよう、お願いいたします。
ただ席替えをすればいい、というだけではなく、部署そのものや、関わるプロジェクトなど、本人としっかり話し合った上で「原因の根本から」変えていただくのが良いかと存じます。

しかしながら、スキルや本人の希望などで、どうしても部署異動が難しい…という場合もあるかもしれません。
その際は、明らかに原因となっているもの(特定の人物や特定の業務など)からできるだけ遠ざけていただくだけでも、随分と働きやすくなるはずです。

ただし、本人が「元の環境で頑張りたい」と言う場合は、無理に環境を変えることはオススメしません。

「腫れ物扱いをされている…」
「自分は、会社に要らない人間なのでは…?」
と本人に思わせてしまう危険があります。

もしその発言自体が「環境を変えたいと言ったら、待遇や評価に影響するかも…」という不安から出たと思われる場合は、しっかりご説明をいただければ、本人も安心です。

心の病は、「弱い人」がかかる病気ではありません

最後に、ひとつだけ申し上げたいことがあります。

心の病は、誰でもかかる可能性のある病気です。

むしろ、「鬱病なんて、なまけ病だ!」と思っている人ほど、心が疲れていても「心の病気」と自分で認めたくなくて、悪化させてしまうこともあります。

心の許容量は人によって違う

ストレスの原因は様々で、許容できるストレス量も人それぞれです。

杓子定規に「他の社員は出来るのに、どうしてアナタはできないの?」と決めつけることは、本人にさらにプレッシャーを与えてしまうことになるので、決して言ってはいけません。

一升瓶に二升は入りません。
どうして入らないんだ、と怒っても、入らないものは入らないのです。

まとめ

今や国民病とも言える、「心の病」は、誰でもかかりうる病気になりました。
「怠け者がかかる」だとか、「繊細で真面目な人ほどかかる」だとか世間では言われていますが、そういうことは関係なく、ただ「心の許容量をオーバーした人がかかる」のだと私は思っています。

大事なのは、心の病にかかった人の環境を変えてあげることと、(会社も本人も)心の許容量に気をつけることです。

・鬱病(心の病)は、風邪と違い、薬だけでは治らない。
・心の病に苦しむ社員がいたら、環境を変えてあげる。
・心の病は弱い人だけがかかる病気ではなく、誰でもかかりうる病気である。
ストレスの許容量は人それぞれ。頑張ることで、容量が増えることはない。
・許容量の大小を、誰かと比べることはしない。

人事担当の方や、部下・後輩を持つ皆さまは、この5点に気をつけていただけますと幸いです。
また、今まさに当事者として苦しんでいる方も、どうか早めにご自身の環境を変えて、苦しみから抜け出すことができますよう、お祈りしております。

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